新型コロナウイルス感染症(COVID-19)はヨーロッパ・アメリカでも感染が拡大するなど、いまだに終息の兆しがみられません。そんな中で期待されているのが特効薬の登場です。COVID-19治療に関する知見はまだまだ限られていますが、少しずつ集まりつつあります。そこで、効果が期待されている薬を以下にまとめてみました。
ロピナビル・リトナビル配合剤
HIV感染症治療薬です。国際医療福祉大学熱海病院からロピナビル・リトナビル配合剤
を投与した症例が報告されています。報告によれば、COVID-19を発症したクルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号の乗客(71歳女性)に対しロピナビル・リトナビル配合剤を使用したところ、自覚症状の改善を認め、入院20日間でPCRの陰性化を示したとのことです。
ファビピラビル
インフルエンザ感染症治療薬です。ただし、日本においては現在使用されている抗インフルエンザ薬で効果がない、パンデミック(世界的な大流行)を起こしたインフルエンザに対しての使用に限られる薬であるため、使用する場合には国の判断が必要です。
試験管内での試験では新型コロナウイルスに対する抑制効果が確認されており、中国ではCOVID-19診療ガイドラインで推奨されています。
シクレソニド
気管支喘息治療のための吸入ステロイド薬です。2月末には神奈川県立足柄上病院からの症例報告があり、シクレソニドを使用したCOVID-19発症のダイヤモンド・プリンセス号の乗客3名において、解熱や体内の酸素状態が改善するなど良好な経過をたどったとのことです。
この吸入薬は、気管支喘息の治療薬として日本の医療現場で長く使用されているため、安全性についてのデータも蓄積されています。
レムデシビル
エボラ出血熱を治療する抗エボラウイルス薬として開発された薬です。日本未承認の薬(世界でも承認している国はない)ですが、新型コロナウイルスに対して効果があるとされ、アメリカ主導の臨床試験が行われています。3月23日の国立国際医療研究センターの発表で、日本もこれに参加する形で臨床試験をスタートすることになりました。
リン酸クロロキン/ヒドロキシクロロキン
リン酸クロロキンはマラリア治療のための抗マラリア薬で、日本では使用されていませんが、中国ではCOVID-19診療ガイドラインで推奨されています。
一方、ヒドロキシクロロキンは免疫調整薬で、SLE(全身性エリテマトーデス)の治療薬として日本でも使用されています。こちらは日本においてCOVID-19の患者への使用で「投与開始後2日目より症状が改善された」との報告があり、COVID-19に対して有効であった可能性が示されています。
カモスタット/ナファモスタット
どちらも急性膵炎などを治療する薬であり、日本で開発され長年使用されています。
カモスタットに関しては、ドイツの研究チームが「新型コロナウイルスが細胞に侵入するのを阻止する」としてその有効性を発表しました。
ナファモスタットに関しては、「カモスタットの10分の1以下の低濃度で新型コロナウイルスが細胞に侵入するのを阻止する」として東京大学医科学研究所が研究を進めています。
どちらの薬も長く日本国内で使用されているため、安全性に関するデータも蓄積されています。
上記のように、COVID-19の症状が改善した症例が報告されている薬もありますが、いずれの薬もCOVID-19に対して確実に効果があると示されているわけではありません。
また、COVID-19の疑いがあるというだけではこれらの薬での治療は受けられません。
現在、COVID-19の特効薬が一刻も早く医療の現場に届くよう、世界各国で薬の効果と安全性を確かめるための臨床試験や研究が急ピッチで進められているところです。
(参考文献:「新型コロナウイルス感染症 COVID-19 診療の手引き」「COVID-19に対する抗ウイルス薬による治療の考え方 第1版」「ロピナビル・リトナビルで治療した新型コロナウイルス肺炎(COVID-19)の症例報告」「COVID-19肺炎初期~中期にシクレソニド吸入を使用し改善した3例」「ヒドロキシクロロキンを使用し症状が改善したCOVID-19の2例」「新型コロナウイルスの感染阻止が期待される国内既存薬剤の同定/東京大学」「今日の治療薬2020」)
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