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Wakako Yoshida

新型コロナのワクチン(続編)

更新日:2021年3月9日

(3月8日 日本人のアナフィラキシーの情報を更新しています)


2021年2月14日、ファイザー社の新型コロナウイルス感染症ワクチン「コミナティ筋注」が日本でも承認されました。


緊急使用が必要なため、申請からわずか2か月という異例のスピードでの特例承認でした。

新薬承認に関する仕事をしている筆者にとっては、開発着手から承認まで1年(通常は10年程度)という全てが信じられないスピードです。


なお、国内臨床試験で日本人119例が接種したところ、日本人特有の懸念は認められず、海外2万例以上のデータと合わせて評価された上で承認されました。

日本は遅いと、欧米からずいぶん遅れた印象があるものの、米国からわずか2カ月しか遅れていない、とも言えます。審査する厚生労働省側も、製薬会社も凄まじい状況で対応されたことでしょう。


しかし一方で、あまりのスピードに「ほんとに投与しても大丈夫?」と、不安が残るのも事実です。


一時的な副反応

ファイザー社ワクチンの臨床試験では、注射部位の局所の痛み等は(8割)、発熱 (14%)、頭痛 (6割)、筋肉痛 (4割)、寒気 (3割)認められています。通常のインフルエンザワクチンよりも高い頻度でみられていますが、数日で回復するために、あまり懸念する必要はなさそうです。


米国では、ワクチン接種後の経過を携帯のシステム(任意)で追跡しています。今年1月20日の時点で、ファイザー社のワクチンは1200万回投与され、約10万人が経過を携帯で報告しています。その結果も上記の臨床試験と大きな違いはみられていません。


アナフィラキシー反応

米国における副反応の調査(VAERS)(昨年12月14日~今年1月18日の期間)によると、ファイザー社ワクチン接種後のアナフィラキシー反応の頻度は9,943,247回中50例に見られており、約100万回に5症例と稀でした。既存のワクチンを100万回投与した場合、アナフィラキシーは0.3~2.1回報告されていていますので、既存のワクチンよりも高い傾向がありました。


日本では、ファイザー社ワクチン接種後のアナフィラキシーの最初の1例が3月5日に、2例目が3月6日に報告されました。

1例目は30歳代の女性で、接種5分以内に咳がみられ、その後、呼吸が早い、まぶたの腫れ、全身のかゆみ等の症状がみら、2例目は20代女性で25分後に蕁麻疹、せきや発熱、血圧低下や息苦しさ等の症状がみられました。どちらも、適切な治療で症状は改善されています。国内で約4万6千人に接種されており、その中で2例発症となります。海外より発症のペースが早いので気になります。今後の国内発生状況も注意深く見る必要があると考えます。

*3月8日 8時AM追記

日本で約7万人が投与され、アナフィラキシーが8例報告されました。20-50代で全員女性です。治療により全員軽快または回復しているものの明らかに米国の20万に1人よりも頻度が高く注意が必要と思われます。



厚生労働省は、接種後15分以上接種会場に留まるよう周知していくこと、透明性の向上及び周知等のため、当面、接種後にアナフィラキシーの報告を受けた際に公表するとしています。


妊婦さんへの投与

妊婦さんは妊娠していない同世代の女性と比較し、新型コロナウイルスに感染した場合重症化しやすく, また早産等のリスクが上がるとの報告があります。

一方、妊婦さんはワクチンの臨床試験に参加していないため、ワクチン接種の安全性に関する⼗分な情報が得られていません。

よって、各国で⾒解が分かれています。⽶国では、妊婦を除外すべきではないとし、イスラエルでは積極的な接種対象としています。⼀⽅で、英国やカナダでは⼗分な臨床データがないことから、妊婦中の接種は推奨していません。

⽇本産婦⼈科感染症学会および⽇本産科婦⼈科学会は、“流⾏拡⼤の現状を踏まえて、妊婦をワクチン接種対象から除外することはしない。接種する場合には、⻑期的な副反応は不明で、胎児および出⽣児への安全性は確⽴していないことを接種前に⼗分に説明する”との見解を述べています。

海外で妊婦さんに投与した症例も出てきていますので、その情報が待たれます。


おわりに

ファイザー社のワクチンが日本で承認されたため、その安全性について注目してみました。既に広く使用されている米国の安全性報告の結果からも現時点では大きな懸念はないと思われます。変異株についても有効である可能性は高いという報告が出てきていますが、効果の持続期間や、長期的な安全性や妊婦さんへの安全性など、わかっていないことが多くあります。また国内のアナフィラキシー反応の今後の報告も気になります。

国内接種症例の情報もこれから集まってきますので、最新情報を引き続き注意深く注目していきましょう。


なお、今後、承認されるワクチンについて、その有効性、安全性は個々の製品によって異なります。それぞれの情報をみていく必要がありますのでご注意ください。


参考: 

1) コミナティ筋注 審査報告書(令和3年2月12日)

3) J Allergy Clin Immunol. 2016 Mar;137(3):868-78. Epub 2015 Oct 6. Pediatrics. 2003;112(4):815.

4) 厚生労働省:プレスリリース(令和3年3月5日)及び新型コロナワクチン接種後にアナフィラキシーとして報告された事例の一覧

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_hukuhannou-utagai-houkoku.html

5) 産経新聞 3月7日オンライン記事 https://www.sankei.com/life/news/210307/lif2103070003-n1.html

6) ⽇本産婦⼈科感染症学会、⽇本産科婦⼈科学会:COVID-19 ワクチ)ン接種を考慮する妊婦さんならびに妊娠を希望する⽅へ(令和3年1⽉27⽇)


2021年3月7日


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