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Tomoya Saika

「免疫力を高めるには○○しなさい」の真実

免疫力とは

「免疫力を高めるには○○しなさい」などという記事は世に多く出回っていますね。新型コロナウイルスの予防としても免疫力は注目されていますが、出回っている記事は宣伝を目的にしているもの、怪しい点、科学的に不正確なものも多くあります。では、免疫力とはいったい何でしょう?実は、免疫力という言葉自体、曖昧で不適切であります。その理由は免役の仕組みを考えれば分かるかもしれません。


免疫の仕組み

免疫について簡単に説明します。免疫とは「疫病を免れる」が原義です。疫病とは感染症のことです。今では、免疫はがんの発生を抑える役割を果たしていることが明らかになり、治療薬にも応用されていますね。免疫を担う代表選手が白血球です。白血球はマクロファージや好中球、ヘルパーT細胞、Bリンパ球などです。この他にも様々な種類があります。これらが役割分担をして免疫の仕組みを担っています。

免疫の仕組みは、大きく「自然免疫」と「獲得免疫」に分けられます。身体にもともと備わっているのが自然免疫です。自然免疫はマクロファージや好中球などが、身体に侵入してきた異物(細菌やウイルス)を真っ先に攻撃します。これを貪食といいます。早く働くという特徴がある一方で、無差別な攻撃であるため、効率が悪いです。また、攻撃し続けることにも限界があります。そこで獲得免疫が重要になります。マクロファージなどは、貪食した異物の情報をヘルパーT細胞に伝えます。そして、ヘルパーT細胞は、B細胞に異物を攻撃するのに最適な武器である抗体を作り出すのです。次に同じ異物が侵入した時に、すぐに抗体を産生できます。後天的に獲得した免疫であることから獲得免疫と呼ばれます。


免疫力が正しくない理由

免疫とは、このように複雑な仕組みで成り立っています。なので、免疫力という言葉一つでは、表現できるほど単純ではありません。免疫力を高めるとしても、何を高めるのか?なんて疑問が出そうです。それに、ただ高めればよいという、単純なものでもなさそうです。

過剰な免疫反応は、体に害を及ぼします。アレルギー反応や膠原病は、自身の免疫反応が必要以上に働き過ぎている状態です。最近では、新型コロナウイルス感染者でサイトカインストームにより重篤化した症例が多く報告されていますが、これも過剰な免疫反応によるものです。

「免疫力を高めるには○○しなさい」などという記事は、安易に信じずに、まずは疑ってから読むべきでしょう。



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